2011年06月09日

溶血性尿毒症症候群(HUS)の治療方法は?

HUSと聞くと、私のようにそれほど詳しくない医療関係者が真っ先に思いつくのは腎透析です。

ですが、腎透析に向かう前にできることがいくつかあります。


基本は腎疾患の治療に共通する戦略ですね、体内水分量と塩分量を補正することです。

これがうまく行くだけで様々な症状を和らげることができますし、その後に起こる出来事も予防することができます。

これはしかし、あくまでも対症療法です。


進行した場合の治療法には、血漿輸注、プロスタグランジン製剤、抗血小板剤、へパリン、FOY、血漿交換等があります。

エフオーワイ(FOY)(小野薬品、主成分ガベキサートメシル酸塩)は、血液凝固に関わるトロンビンと活性型第X因子の働きを抑えることで、血液が凝固すのを防ぐ薬です。

いずれの治療薬も血管で血液が固まる状態を何とかしようと言うもので、FOYなどは世界的に有名な汎発性血管内血液凝固症の治療薬でもあります。


また、赤血球や血小板の輸血が有効である場合もありますが、凝固がコントロールできていないとかえって悪化させることもあります。

すぐに透析できる状態で、医師の判断でやってみるということですね。


最終的な治療方法の腎透析をするべきかどうかはBUNの数値など、いくつかの検査項目で決められます。

小さい子供の場合は透析をするための血管を確保するのが難しいので腹膜透析を行うことになるはずです。

腎透析は、検査数値が改善するまで繰り返し行われますが、ほとんどの症例では短期間の透析で回復できます。


ごくまれに腎臓のダメージがゆっくり進行して慢性じん不全へと移行しそうになるケースがあるようです。

その場合はたんぱく制限食やACEインヒビターなどの薬剤投与で時間をかけて改善させるトライアルがなされます。


HUSは、ならないにこしたことはない病気の代表例ですね。。。
posted by HUS-EHEC at 01:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 溶血性尿毒症症候群とは? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月05日

溶血性尿毒症症候群(HUS)の診断はどうやってされるの?

診断について書くと

「定義」を書け! 他のことはいらん!

と怒鳴る怖い先生もいますので、まずはHUSの医学的定義を書いてみます。

@3主徴
1)溶血性貧血⇒破砕状赤血球を伴う貧血でHb10g/dl以下
2)血小板減少⇒血小板数10万/μl以下
3)急性腎機能障害⇒血清クレアチニン濃度が年齢別基準値の97.5%値以上で各個人の健常時の値の1.5倍以上

A随伴する症状
1)中枢神経症状⇒意識障害・痙攣・頭痛など。HUS発症直後に急性脳症を合併することがある。
2)その他⇒肝機能障害(トランスアミラーゼの上昇)、肝内胆管・胆嚢結石・膵炎・DICを合併することがある。


でも、こんなこと、ここで書いても誰も喜ばないですよね。

医学生の試験対策ならこんなサイト見ないだろうし(笑)。


重要なのは前の記事の
溶血性尿毒症症候群 (HUS)と腎不全の兆候と症状
に書いたHUSの兆候や症状です。

全部がそろってはじめてHUSだというわけではありません。

二つ以上あれば病院に連れて行ってください。

もしもどれか一つでも気がついたら、それから24時間は注意深く観察してください。

もしもその子がEHEC(腸管出血性大腸炎)に感染した可能性が高いとわかっているのであれば、ひとつでも見つけたらすぐに連れて行ってもかまいません。


医者の方はその子の病歴や消化管症状などからHUSを疑った場合、血液検査をします。

赤血球が壊れているかどうかはそれで簡単にわかりますので、赤血球の形がおかしくないか、血小板がすごく減ってないかという項目を調べればすぐに「HUS疑い」の診断がつきます。

(それが溶血性貧血が起こっているかということです)


そこからさらに尿や血液検査で腎機能がどの程度障害されているかを調べます。

尿検査や、血中クレアチニンの数値などから腎障害の程度が推測できます。


もしもHUSが疑われた場合には「腎透析」の準備をしながら入院を促します。

腎透析の設備がない診療所などの場合はすみやかに設備のある病院が紹介されるでしょう。


HUSの致死率は数%で、いかに迅速に対処できるかが生死の境目だと言われます。
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溶血性尿毒症症候群 (HUS)と腎不全の兆候と症状


HUSを発症した子供は青白く、ぐったり疲れていて、機嫌が悪くなります。
(病気の子どものあたりまえですね^^;)

意識障害やけいれんに進むことも少なくありません。

他の兆候としては鼻血や血痰、皮下出血などが認められることがあります。

これはHUSでは大量の血小板が消費されてしまい、普通なら止まるような小さな傷からの出血が止まらなくなることが原因です。

通常、HUSのこういう兆候や症状は消化管感染の症状が見つかってから一週間以上後になって起こってきます。


HUSの状態になると、半分以上の患者さんが急性腎不全の状態に陥ります。
(全員が腎不全の状態になるわけではないのです。)

腎不全になればおしっこの量が急速に減りますし、目で見てわかる血尿が出ることもあります。

毒素で傷ついた腎臓の毛細血管に赤血球が詰まって崩壊し、さらに赤血球が血の塊となって詰まっていきます。

これを取り除くために腎臓はフル活動します。

血の塊や貯留した水分を取り除いて血流をスムースにするために、血液内の水分は外に出されます。そうすると身体の方には過剰に水分がたまります、これが高血圧を引き起こしますし、顔や手足に始まって、全身がむくんで膨らんで行きます。


両親や保護者はこれらの兆候を初期から見逃さないでください。

もしも子供がお腹を壊したあとで、突然鼻血を出したり、血が止まりにくかったり、手足や顔が急にむくんできたり、おしっこに行ってる様子がなかったり、あるいはすごくしんどそうにしているようなら、速やかに医療機関を受診させてください。

特に、おしっこが全然出ない状態の場合は大至急救急診療を受診してください。


一般的に、O157感染症の場合のHUS発症率は4〜7%ぐらいです。

それが2008年から2010年までの3年ぐらいの常識です。

O111の場合は10〜20%の人がHUSを発症したということで、何か新型の菌なのではないかと危惧されています。

解析結果はいったいいつ出るのでしょうね???
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2011年06月03日

なにがHUS(溶血性尿毒症症候群)を引き起こすの?


現在、溶血性尿毒症症候群 (HUS)を引き起こす原因のほとんどは病原性大腸菌が消化管感染することで起こります。

これらの病原性大腸菌は腸管上皮を痛めて出血性の下痢を引き起こすために、腸管出血性大腸菌(EHEC, enterohaemorrhagic E. coli)Escherichia coli (E. coli) と呼ばれます。

EColiCRIS051-Fig2.jpg
WikioediaにあったO157の電子顕微鏡画像です。
O157は条件が整えば、粘液のようなものを出して、これで自分たちに居心地の良いベッドを作りだして繁殖します(右側の画像)。

EHECは腸管に入るとそこで増殖し、ベロ毒素と言われる毒素を産生します。

この毒素が腸管上皮を破壊し、さらには血流に入るのですが、この毒素は腎臓の血管内皮細胞にも非常に取り付き易く、腎臓の毛細血管の内側をガタガタにしてしまいます。

そこで赤血球が引っ掛かって壊れてしまうわけです。


ほとんどの溶血性尿毒症症候群 (HUS)ではその前にO157などの病原性大腸菌による消化管感染症が認められます。

これらの大腸菌が消化管に入る経路は、汚染された食物を食べる場合がほとんどです。

牛は感染しても症状が出ないことから腸の常在菌となっていることが多くて、牛肉が多いのですが、汚染された食物であれば何でもありです。

怖いのは感染動物や感染者の糞便で汚染されたプールや池で泳ぐことによる感染です。

日本ではまず心配いらないと思いますけど・・・。


子供が感染した場合の主な症状は、激しい腹痛、吐き気、おう吐、出血性の下痢ですね。

でも、大部分の子どもはこれらの出血性の下痢にまで至っても2,3日で回復できて、HUSになることはめったにないのが2010年ごろまでの通例でした。

今年、2011年に焼き肉酒屋えびすのユッケで感染したO111は高い確率でHUSが発症すると話題になりましたが、その一か月後からヨーロッパで拡大しているO104はそれどころではなさそうです。


ちなみに、初めてO157などの腸管出血性大腸菌EHECの存在が確認されたのは1984年のことです。
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2011年06月02日

溶血性尿毒症症候群 (HUS)とは?


溶血性尿毒症症候群 (HUS)とは、赤血球が壊されることで引き起こされる急性腎不全の一つで、小児科での急性腎不全の原因としては最も多いものです。

溶血性尿毒症症候群 (HUS)は命に関わる重篤な疾患ですが、ほとんどの子どもはHUSにかかっても速やかに適切な治療を受けることができれば後遺症なく回復できます。


残念ながら重症化したり不幸な転帰を取るケースは、発見が遅すぎたケースや、

症状が増悪し易い遺伝子変異を伴う新型の腸管出血性大腸菌(焼き肉屋えびすのO111など)に感染した場合、

あるいはもともと合併症があったなどでその子の予備能力(病気に耐える体力)が少なかった場合などです。


健康な赤血球は表面がスムーズで丸いものです。

Hematies_normales.jpg

ぜんざいに入ってる白玉みたいな形ですね、綺麗な細胞です。


ですが、HUSでは毒素などによって赤血球表面が傷つけられて

(次の記事で書きますが、この表現は正確ではありません。)ぼろぼろになっています。


浸透圧によって血球の形が変わるのをイメージ化したのが下の画像です。

赤血球浸透圧.png

正確なイメージとは違いますが、赤血球はいろんな原因で形が変わったり傷ついたりします。

このように表面がでこぼこになって形の歪んだ赤血球は末梢血管をスムーズに流れることができません。

それで腎臓の中の小さな血管を詰まらせてしまい、腎不全を誘発するのです。


画像はWikipediaから拝借しました。
posted by HUS-EHEC at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 溶血性尿毒症症候群とは? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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