2011年06月13日

腸管出血性大腸菌感染症の診断と治療方法を述べよ(内科試験対策)

腸管出血性大腸菌感染症について、診断と治療方法を含めて述べよ (内科学的観点から)


今回は内科の試験のつもりで書いてみます。
(また一般の方はスルーしてください。)


腸管出血性大腸菌感染症とは、ベロ毒素遺伝子を獲得したことにより病原性を持つに至った大腸菌(腸管出血性大腸菌EHEC)が引き起こす感染症を指す。

EHECは汚染された食物を経口摂取することで感染する。経口摂取した人の約半数が発症すると考えられており、潜伏期は経口摂取後3〜8日である。

EHECの産生するベロ毒素は腸管上皮細胞や血管内皮細胞を集中的に攻撃して細胞死に至らしめるので、腸管粘膜細胞が死んで脱落し、さらに腸管の血管壁も破壊される。

このために激しい腹痛とともに頻回に粘性のない水溶性の血便が排泄され、「赤ワイン様下痢」という表現もされる。

発熱は出血性下痢が続いている間に一過性に出ることが多い。


下痢の初発症状から約7日から10日後に溶血性尿毒症症候群HUSや、脳症などの重篤な合併症を発症する場合がある。

(下痢が激しい場合や、抗生剤を使用した場合にHUSの発症率が高いことが報告されている)

HUSになると赤血球が破壊されて貧血になるために血色が悪くなり、腎機能が阻害されることで浮腫が認められる。

脳症の場合、けいれんや意識混濁などの神経症状が出る。

HUSの発症頻度は典型的なO157:H7の大腸菌型の場合で1%から10%の範囲とされるが、これを大きく超える例もときどき認められる。


診断は症状と食事内容の問診からEHECによる消化管感染をまず疑い、治療を進めつつ、便などの感染細菌の型の判定により行う。

O157あるいはベロ毒素に対する特異抗体での検査が主流であるが、今後はPCRによる大腸菌の遺伝子型診断が主流になっていくものとも割れる。


治療方法は、下痢だけの場合は補液と対症療法により、自然回復を待つ。個人差はあるが、一週間前後の安静と管理により自然回復する。

HUSを発症した場合の治療方法としては血漿交換や抗凝固療法などを行い、腎臓内の血流改善による腎機能の回復を試みるが、これが奏功しない場合には速やかに人工透析により腎機能を補う。

脳症を発症した場合は脳圧亢進にならないように補液管理を行いつつ、抗凝固療法により、血栓が増えることを阻止する。

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2011年06月12日

腸管出血性大腸菌とその感染症について、微生物学の試験対策

腸管出血性大腸菌とその感染症について説明せよ(微生物学的観点から)

試験の解答のつもりで書いてみます。
(堅苦しいので一般の方はスルーしてください。)

腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli:EHEC)とは、ベロ毒素(志賀毒素)遺伝子を持つ病原性大腸菌の総称であり、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)あるいは志賀毒素産生性大腸菌(STEC)とも呼ばれる。

志賀毒素は本来、志賀潔が発見した赤痢菌の持つ毒素であるが、遺伝子配列を比較すると赤痢菌は大腸菌の一部とみなされるほど良く似ている。

このため、赤痢菌と大腸菌が混在した際にプラスミドベクターを介して赤痢菌から大腸菌に毒素遺伝子がtransfectionされたものと思われる。

ベロ毒素は2種類知られていて、1型は赤痢菌の志賀毒素とほぼ同じ遺伝子配列を、2型は志賀毒素との相同性は55%である。

(つまり2型毒素は志賀潔の発見した赤痢菌とは異なる細菌由来の毒素であると思われる。)

ベロ毒素は腸管上皮細胞にβサブユニットで細胞表面の糖脂質受容体Gb3に付着してαサブユニットを細胞内に注入する。

αサブユニットはリボゾームRNA(60Sリボゾーム)と結合して、蛋白合成を阻害することで細胞のタンパク合成を阻害して細胞死に至らしめる。

Gb3をたくさん発現している細胞には腸管上皮細胞以外に、血管内皮細胞と神経細胞がある。

このために、ベロ毒素で障害を受けて腸管上皮細胞と腸管の血管内皮細胞が細胞死を起こし、出血性の下痢が起こる。

また、血管内皮細胞が障害を受けることで微小血管が詰まり、赤血球が破砕されてさらに血管が詰まり、これが腎臓の毛細血管で特に強く起こることで溶血性尿毒症症候群(HUS)という腎障害が誘発される。

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また、神経細胞が障害を受けることで、けいれんや意識混濁などの様々な神経症状が出ると考えられているが、この中には脳の血管内皮細胞が障害を受けることによる血栓症の影響も含まれている。

抗生剤は大腸菌を速やかに死滅させることができるが、細菌数が増えている状態でこれを行うと、ベロ毒素や最近の細胞壁のエンドトキシンなどが一斉に放出され、HUSがより高率に誘発されると考えられている。
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